ELSIをどう理解すればいいの?

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端的にいえば、「正しいことをする」

解説は多々あれど理解は難しい

ELSIの内容、意味するところなんて、webで検索をかければ様々な形で山ほどの解説を見出すことができます。内容だけではなく、その概念が導入される歴史的な経緯も、webで簡単に見つけることができるでしょう。

でも、そうした多くの解説は固い言葉で語られ、とにかく理解が難しい。というか、そもそもELSIという概念の外縁自体が明確に定まっていない、私にはそう感じられます。ここでは、そうした曖昧模糊とした説明を繰り返すことはしません。

我々が何らかの事業を営むとき(もちろん研究も一つの事業です)、何らかの行動を起こすとき、倫理的、法的、社会的に問題がないのかを当然考えます。こうしたELSI的視点からの課題を満たし解決するためには何が必要なのかを、「私」の理解に基づいて簡易、平明な言葉で語りたいと思います。

突き詰めれば、”don’t be evil”

ELSI的視点を満たすためにすべきことは何か。端的にいえば、「正しいことをする」です。Googleの行動規範に、”don’t be evil”というものがありました。持株会社となったAlphabetの行動規範には”do the right thing”とも書かれています。

ELSIに関しても同じではないかと思っています。言葉を足せば、何かをするときには、倫理的、法的、社会的な視点に照らして正しいことをする、ということです。

「正しさ」は社会によって異なる

絶対の正しさなんて存在しない

正しいことをする。そうはいっても、正しいこととは何なのか。それ自体が抽象的です。

何らかの行動をする私、我々、あなた、彼/彼女、彼等、さらにはそうした皆が属する組織は社会的な存在です。社会の中で活動を行います。自らの行動に際して求められる「正しさ」とは、結局のところその属する社会の規範に照らした正しさとなります。

「属する社会の規範に照らした正しさ」、これが厄介の元ですね。当たり前ですが、絶対の正しさなんて存在しません。誤解を恐れずにいえば、属する社会が異なれば求められる正しさも変わります。

例えば法律。法律を守る、これはどんな社会でも強く求められることです。しかしながら国が異なれば守るべき法律の内容も変わります。

社会は多層構造、様々な社会が絡み合い世界を構成

世界は広いです。そこには多くの人が住んでいます。そうした人々が集まって、様々な社会を形成しています。小さなものは家族や親族、そして学校や会社といった組織、居住する地域、宗教や民族によって形成される社会もあります。

最小の社会は一個人、大きくは国家、さらにはこの世界も一つの社会です。こうした様々な社会が重層的に絡み合い、我々の住む世界が構成されているのです。

法律は従うべき規範の全てではない

それぞれの社会には特有の「性格」が存在します。ここでいう性格とは、その社会で適用されるルールやタブー、構成する人々の持つ考え方や行動原理、さらには人々が共通して持つ経験や記憶、こうした事柄を全てひっくるめた、その社会のあり方を特徴付けるものです。

こうした性格に基づき、その社会が求める規範が形成されていきます。法律に記された内容は、社会の性格や特徴に基づいて形成された規範の最たるものではあります。しかしながら、法律は従うべき規範の全てではないのです。

研究ではなく組織運営という実務のために

万能の方法論はない

難しいのです。ELSIに対応するためにはこうすればいい、といった万能の方法論はありません。だからこそELSIへの対応は一つの学問領域として研究の対象になっています。

そうした研究の成果が積み重なって、我々が社会の中で「正しく」行動する上での指針が示されるのであれば、これはとてもありがたい。ELSI研究に期待する所以です。

組織運営は待ったなし

ただ、我々や我々の属する組織の活動は待ったなしです。日々様々な活動を社会の中で行っています。その活動の時々で、「正しく」行動するための判断が求められます。

そうした判断の拠り所となるのは、自分と同様の活動を行う組織が実際に直面した類似事象であり、こうした事象を基にした「事例解説」とでもいうべきものではないかと考えています。

研究ではなく組織運営という実務において、ELSIへの対応を極力遺漏なく熟していくために有効な方策は何か。現時点では、この事例解説を充実させ、組織の運営に携わる人々に提供する。このような方策しか思いつきません。

アップデートした「事例解説」の提供

我々が属する社会は一つではありません。属する社会ごとに規範は存在するでしょうし、時の経過によって規範は変化していくでしょう。また、変化の激しい現代社会にあって、従来にない新たな事象に直面する事態も日々起こり得ます。

こうした変化に対応し、新たな事例解説は恒常的に求められるでしょうし、作成された事例解説のアップデートも必要となるでしょう。

そんな想いから本サイトのコンテンツを作成、提供していきたいと考えています。

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