ELSI的視点からの検討 – 分野ごとのポイント
ELSIに関し、どのような分野でどのように対応していくべきなのか。文科省及び関連機関(大学を含む)が公表している諸文書なども参考にしつつ、簡単にまとめてみました。
自身の研究に関連する分野、技術での記載があれば、ELSI的視点からの検討を考えてみてください。
大分野での包括的な課題と今後の方向性
人口知能(AI・生成AIなど)
課題
プライバシー、データ管理・所有、著作権、差別バイアス、説明責任、誤情報・フェイクコンテンツ、教育の公平性など。
今後の方向性
- AI戦略や研究開発基本計画にELSIを組み込む形で、制度的・ガイドライン的な枠組みを強化。
- 大学・研究機関での自主的なルール整備も促進。
- AIの社会実装を見据えた倫理・ガバナンス体制の整備。
生命科学・ゲノム
課題
同意取得の方法、個人・集団のプライバシー、結果の帰属・公開、倫理審査や安全管理、リスクの予見と対応など。
今後の方向性
- 同意取得条件設定の厳格化。
- 倫理教育・研究者研修の充実。
- 大学内・研究機関内でのガバナンス体制の強化など。
宇宙探査・宇宙開発
課題
宇宙資源の扱い、他惑星環境への影響、国際法・宇宙法との整合性、ミッションで使われるデータ・技術の所有権・帰属、宇宙環境汚染、惑星保護など。
今後の方向性
- 国際的規範・法制度との整合性をとること。
- ミッションの初期段階からELSIを含めた計画立案・影響評価をすること。
- 学際的研究を通じた倫理・哲学・法学の参加拡大。
気候技術・脱炭素化・環境技術
課題
公平性(政策や技術の恩恵・負担がどこに偏るか)、意思決定プロセスの透明性、住民・ステークホルダー参加、環境影響やリスクの長期的評価、データの信頼性・所有権、地球規模な影響と地域差など。
今後の方向性
- 技術導入・政策決定にST (Science & Technology) と社会の対話を組み込む。
- 技術評価(Technology Assessment)や参加型政策設計を拡充。
- 気候モデルとデータの公開性・アクセス性を確保。
その他の新興技術
課題
未知のリスク、価値観の多様性の扱い、技術の社会的受容、制度が追いつかないこと、規制・法律の欠落など。
今後の方向性
- 将来の技術を早い段階から規範・制度・倫理的配慮を準備すること。
- 社会とのコミュニケーション、学際融合、人材育成の強化。
特定(技術)分野での検討用キーワード
データ収集・認証
検討用キーワード
ビッグデータ、個人データ、顔認証、生体認証、SNS、匿名化、決済、QRコード決済、クレジット決済、金融サービス、マイナンバー
コメント
- 社会需要急増
- 新技術の導入に制度化が追いつかず
脳・知能
検討用キーワード
認知、IQ、障碍
コメント
- 事例は少ない
ロボット・自動化
検討用キーワード
自動運転、雇用、失業、非人間化、巨大企業配送倉庫
コメント
- 社会需要増大
- 社会的影響度大
医療
検討用キーワード
先端医療、生殖医療、再生医療、治験、ゲノム編集、デザイナーベビー
コメント
- 制度として確立されている感
- ELSI的視点からの対応という新たな枠組みによる貢献の余地は多くない
遺伝子組み換え
検討用キーワード
遺伝子組み換え作物、遺伝子組み換え動物、生物多様性条約
コメント
- 制度化されている分野
化学物質管理・ナノテクノロジー
検討用キーワード
化審法・新規化学物質・環境放出・リスク評価
コメント
- 制度化されている分野
安全保障貿易管理
検討用キーワード
共同研究、研究発表、外国人研究者、留学生
コメント
- 法的枠組みとして堅固な制度
- 既存の対応制度及び組織が存在
- レピュテーションリスクが大きい
既存法制度との整合
検討用キーワード
YouTube、Google Map、Airbnb、SNS、著作権、プライバシー、名誉毀損
コメント
- 幅広い検討が必要
- ケースバイケースの対応
社会慣習・宗教
検討用キーワード
ジェンダー、LGBT、戒律
コメント
- 特に宗教は対応が難しい
差別
検討用キーワード
男女、地域、国、人種、知力、年齢、障害者、ポリティカル・コレクトネス
コメント
- 基準は時々刻々変化
人権・ハラスメント・モラル
検討用キーワード
パワハラ、セクハラ、アカハラ、ブラック、剽窃、就業規則
コメント
- 基準は時々刻々変化
- 制度的な対応が必須