ELSI-事例解説/検討 #1-1

ELSI-事例解説/問いかけ #1 で設定された広島大学A研究室による研究の実施に関し、ELSI的視点からの具体的検討を行ってみる。検討の視点は多岐にわたるが、まずは研究対象技術から見てみよう。

研究対象技術に関する検討

A研究室で研究しているのは生体認証技術である。具体的な技術はELSI-事例解説/問いかけ #1で示した以下の①から⑤であるが、これらは皆既に社会に実装されている。そうした現実の中で、その研究実施の是非に係る議論が大きく存在していないのであれば、その限りにおいてこうした生体認証技術を研究の遡上に載せること自体にELSI的な視点からの検討の必要性は高くはないだろう。

① 顔認証技術
② 光彩認証技術
③ 声紋認証技術
④ 指紋認証技術
⑤ 掌毛細血管認証技術

それは、社会の判断としてもし仮に①から⑤の認証技術の社会実装に何らかの問題があると判断されているなであれば既に何らかの異議が申し立てられていると考えられるからである。ただし、油断はできない。それは、あくまでも現時点での話だからである。

問題の有無の断の基礎となる社会の価値意識は常に変わり得る。ポジティブに表現するのであれば、社会の価値意識は常に進化している。昨日まで問題なしと判断していた価値意識が明日も同じとは限らない。

もう一つの留意点は、既に社会で実装されている技術であっても、科学的な知見の充実によって新たな知識が獲得され、その知識に基づけば問題ないとされていた技術の利用が、突然に問題ありと断ぜられる可能性があるからである。

従って、上記①から⑤の生体認証技術の研究を行うことが現時点において問題ないとしても、上記①から⑤以外の生体認証技術であればどうだろうか。例えばヒトの全ゲノムを瞬時に読み取り(そうしたことが可能か否かはこの際考えない)、そのデータを事前に登録された当該人のゲノムデータと照合することによって認証を行う。

このような生体認証技術の研究はELSI的視点からの検討が必要ないのだろうか。

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